◆深刻な人口減と高齢化

国立社会保障・人口問題研究所は、2040年の都道府県別人口などを予測する「地域別将来推計人口」を発表した。それによると、全都道府県で現在の人口(2010年国勢調査結果)を下回るだけでなく、都市部で急速な高齢化することが明らかになった。人口減少と高齢化は、生産人口の減少につながるため経済活動の低下をもたらす可能性が強い。「このまま放置すると深刻な状況になる」(政治ジャーナリスト)ことが懸念されている。「地域別将来推計人口」は、国勢調査結果に、死亡率や人口移動などの要素を加え算出した。

2005年の国勢調査結果に基づいた前回推計では、東京と沖縄は人口が増加することになっていたが、今回はこの2都県でも減少に転じた。2010年の総人口を100にすると、2040年には83.8に落ち込む。都道府県別では、最も減少するのは秋田(64.4)で、緩やかなのは沖縄(98.3)だった。

人口減とともに顕著なのが都市部での高齢化だ。総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)でみると、2040年には全都道府県で30%を超えるが、大都市圏での高齢化の進展は急激だ。埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知滋賀、沖縄の7都県では65歳以上の人口は、2010年人口の1.4倍以上になる。75歳以上でみれば、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、滋賀、大阪、沖縄の8都県では1.7倍以上。中でも埼玉、神奈川の2県は2倍以上になる。

この急激な高齢化にはなかなか打つ手がないのが現状だ。菅義偉官房長官は、この推計結果を受け、記者会見で「出生率2.0との目標に挑戦することも一つの考えだ」と述べたが、この目標自体「画に描いた餅」(ジャーナリスト)という見方もある。2011年の出生率は1.39に過ぎず、厚生労働省の試算(2007年)では、「全女性の結婚・出産の希望がかなう」という前提でも1.75にしかならない。先進国は一様に少子化に悩んでいるが、克服したのはフランスぐらいしか例がない。フランスは毎年、少子化対策に国民総生産(GDP)の約3%を充て、2.0%にまで戻したが、日本の少子化対策費はフランスの3割程度というのが現状だ。

人口問題に詳しいジャーナリストは「成長戦略による経済対策は即効性があるが、人口問題のような長期的視点から考える政治家が少ない。少子化対策の効果は20年以上後にならないと現れないため、目先の対策に追われているが、このままでは取り返しが付かないことになりかねない」と政治が正面から高齢化や人口減に取り組まないことを批判している。

さらなる対策が急がれているのではないか。