◆自治体の独自課税に「クギ」

最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は、神奈川県が条例で独自に導入していた「臨時特例企業税」について、「地方税法の趣旨に反する」との判断を示し、県に原告企業から徴収した課税額全額を返還するよう命じた。裁判は、地方自治体の独自課税がどこまで認められるかが焦点で、判決は「法の趣旨の範囲内」での課税以外は認めないことを明確にした。「地方分権」の掛け声の下、独自課税に踏み切った自治体は多いが、今回の判決はそれにクギを刺した格好だ。

原告は神奈川県藤沢市に工場を持つ「いすゞ自動車」。2003、2004年度に納めた約19億円を返還するよう求めていた。1審の横浜地裁では原告の主張が認められたが、2審の東京高裁では県の主張を認める逆転判決になっていた。

地方税法では、法人事業税は黒字企業であっても、過去5年間に生じた赤字を欠損金として控除できるよう定めている。しかし、神奈川県の臨時特例企業税は、この控除額に2~3%課税する仕組みだった。判決は控除規定について「各事業年度の所得額と欠損金額の平準化を図り、法人の税負担を均等化して公平な課税を行う趣旨から定められている」としたうえで、「(条例は)欠損金自体を課税対象にしている」と指摘。地方税法の趣旨を逸脱している、と判断した。

神奈川県がこの独自課税を導入したのは2001年。不況で税収が落ち込む中、安定した財源として考え出され、総務省とも協議したうえの導入だった。現在は資本規模などにより単年度で課税できる「外形標準課税」制度が導入されたため、すでに廃止されている。

神奈川県に与える影響は深刻だ。黒岩祐治知事は「地方分権の時代に逆行している」と判決を批判したが、返還命令を受け入れることを表明。原告には還付加算金(利子)を含め約26億9000万円を返す。さらに、同じように課税した約1700社にも、「時効」になっていない過去10年分の課税額に還付加算金を上乗せして返還する。総額は約635億円で県は、財政調整基金を取り崩して充てる。基金は現在699億円。基金がほぼなくなることで、財政危機が深刻化する可能性も指摘されている。

自治体の独自課税は年々増えており、2010年度では約516億円。2000年度の倍以上になっている。ほかに同様の訴訟は起きておらず、直ちに判決の影響が広がることはないと見られている。ジャーナリストは「同じような訴訟が起きる可能性は少なくない。訴訟になれば、自治体の敗訴が濃厚だ。今後は独自課税にはより慎重な姿勢が必要だ」という。安易な「地方の時代」「地方分権」は認められないということのようだ。