福島再生 歩み確実に

与党、首相に14次提言 
産業集積、観光促進で交流増 
東日本大震災からの復興加速へ

自民、公明の与党両党の東日本大震災復興加速化本部は4日、首相官邸で石破茂首相に対し、震災と東京電力福島第1原発事故からの復興加速化に向けた第14次提言を手渡した。石破首相は「福島の復興なくして日本の再生はない。次の5年に向けてさらに努力していく」と応じた。公明党から赤羽一嘉復興加速化本部長(副代表)、平木だいさく事務局長(参院議員)、中川宏昌副本部長(衆院議員)が同席した。

石破首相(右から5人目)に第14次提言を申し入れる赤羽本部長(左から5人目)ら=4日 首相官邸

席上、赤羽本部長は「希望する全住民の帰還実現は自公の約束だ。政府・与党が一体で浜通り地域の復興を力強く後押ししなければならない」と力説。今年度で終了する「第2期復興・創生期間」後の5年間の対応について、復興が本格化する地域の歩みを途切れさせることなく、十分な財源を確保し、政府が責任を持って福島再生への道筋を示すよう強く求めた。

提言では、原子力災害からの復興・再生に向けて、世界に前例のない廃炉作業を安全かつ着実に進めるとともに、同原発2号機での燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)の取り出しに関して、東京電力自らが協力会社任せにせず、国も責任を持って全作業に臨むよう要請した。

除去土壌の復興再生利用については、政府が率先して首相官邸や中央官庁の花壇などでの利用を進め、段階的に拡大することを明記。また、帰還・移住者の生活環境整備を進めるほか、浜通り地域の関係・交流人口の拡大へ、ホープツーリズムなどの観光振興に取り組むことも掲げた。

新産業の創出を巡っては、福島国際研究教育機構(F―REI)と産官学の連携で福島イノベーション・コースト構想を具現化。重点分野である衛星・宇宙関連の将来を見据えた実用化開発を通じ、産業集積の求心力向上を訴えた。

地震・津波被災地域については、国内外の誘客を促進し、震災遺構や伝承施設と連携した、震災の記憶と教訓を後世に継承することを要望した。

災害関連死防ぐ司令塔
平時から備える専門家集団へ
防災庁の創設巡り公明提言

公明党の「新たな防災・減災・復興政策検討委員会」(委員長=赤羽一嘉副代表)と復興・防災部会(部会長=中川宏昌衆院議員)は4日、首相官邸で石破茂首相と会い、災害時の司令塔として政府が2026年度の創設をめざす防災庁に関する提言を行った。石破首相は「提案を生かして進めていきたい」と応じた。

赤羽副代表は「少子高齢化によって地域の防災力は極めて厳しい状況にある」と指摘。その上で「防災の専門家集団をつくり、平時から災害に備えていくことが重要だ」と強調した。

提言では、防災庁が災害関連死ゼロを可能とする司令塔であることを基本理念に掲げるよう要請。発災時の迅速な情報共有など“現場とつながる”実効性ある体制構築を要望した。

また、人工知能(AI)やビッグデータを活用した災害予測精度の向上などを実現する「防災DX(デジタルトランスフォーメーション)」の全国展開や、平時から自治体、民間団体と緊密に連携し、有事には即応的に機能する指揮・調整体制の確立を求めた。

一方、避難所の環境改善に向けて、TKB(トイレ、キッチン、ベッド)や被災者が尊厳ある生活を営むための「スフィア基準」の導入促進を要請。災害ケースマネジメントの全国展開を図り、被災者一人一人に寄り添う支援体制の標準化も求めた。