◆「旅行収支」が44年ぶりに黒字

財務省が発表した今年4月の「旅行収支」が177億円の黒字になった。旅行収支は、外国人旅行者が国内で使ったお金から、日本人旅行者が外国で使ったお金を差し引いた額。旅行収支の黒字は、大阪万博が開かれた1970年7月以来、44年ぶりだ。背景には来日する外国人旅行者の増加がある。政府は海外からの旅行者を増やす政策に一段と力を入れることにしており、「日本経済の大きな柱になる可能性を秘めている」(経済ジャーナリスト)という見方が広まっている。

4月の訪日外国人旅行者は123万1500人(推計)。1964年の調査開始以来、最多になった。4月の出国日本人は119万人だったため、これも44年ぶりに「逆転」した。訪日外国人が増えている理由は、3月に羽田空港の国際線の発着枠が拡大し、台湾や中国からの観光客が増えたことや、昨年7月からタイとマレーシアに対する短期滞在査証(ビザ)を免除したことなどがある。さらに東日本大震災から3年経過し、風評被害が収まっていることも挙げられる。一方で、人口減少から海外に出る日本人は頭打ち状態とみられている。

このため、民間エコノミストの間では「旅行収支の黒字基調は今後も続く」との見方が支配的だ。政府は、東京五輪・パラリンピックが開催される2020年には訪日外国人旅行者を2000万人、2030年には3000万人にすることを目論む。ビザ免除はインドネシアなどにも対象国を増やす方向で検討しているほか、黒字定着のため、外国人旅行者の財布の口を緩める方策として、10月には消費税のかからない免税品目を、外国人に人気のある食料品、化粧品に拡大する方針だ。さらに外国人対象の免税店を倍増させ全国で1万店にすることを計画している。

観光ジャーナリストは「日本は四季に恵まれ、自然が豊かで、歴史的建造物も多いため、観光立国の条件を備えているが、政府の対策が遅れ、宝の持ち腐れ状態だった」と指摘する。国際通貨基金(IMF)によれば、観光国スペインの旅行収支は403億7000万㌦の黒字(2012年)。国内総生産(GDP)の3.1%を占めている。日本は0.22%の赤字でその差は大きい。

経済ジャーナリストは「東京五輪に向けて『おもてなし』の心を前面に出して、観光客を誘致しようとしているが、外国語表記の標識は大都市以外では不足しているのが実情だ。観光業界は人手不足になりがちだが、待遇の悪さを指摘する声も強い。政府は掛け声を掛けるだけでなく、目配りの利いた政策を展開すべきだろう」と話している。

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