◆在宅医療を推進する診療報酬改定

中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)は、2014年度の診療報酬改定をまとめ、田村憲久厚労相に答申した。今回の改定では、高齢化に伴い急増する医療費を抑制するために、「病院から家庭」という在宅医療の方針を強く打ち出したのが特色だ。しかし、効果が不透明なところもあり、医療費抑制の切り札になるかは微妙だ。

改定の焦点の一つは、4月から引き上げられる消費税への対応だった。診療報酬はこれまで非課税になっており、1989年の消費税導入、1997年の税率引き上げ時には、検査器材や寝具、食事などに上乗せする形を取った。しかし、医療機関からは「漏れがあり、転嫁できない」などという声が強く、今回初めて初診料と再診料といった基本料金に消費税分を上乗せすることになった。初診料は120円増の2820円に、再診料は30円引き上げ720円になる。

最大の焦点は、在宅医療推進のためのインセンティブをどうするかだった。盛り込まれたのは、「医療費の無駄遣いの典型」と批判されることの多かった急性期病床(重症患者向けベッド)を大幅に減らし、代わって「地域包括ケア病床」を新設。リハビリなどに積極的に取り組み、患者を退院させている病院は、その実績で診療報酬を手厚く配分するというものだ。

急性期病床は、患者7人に看護師1人という体制が条件で、診療報酬を高く設定したため、多くの病院が急性期病床を持ち、軽症患者を長期間入院させるなど「弊害」が指摘されていた。答申では、全国で約36万床ある急性期病床は、来年度までに9万床減らし、高齢化がピークになる2025年度には半減させる方針だ。

さらに在宅医療のカギを握る「主治医」の役割を高める。高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症のうち複数の症状を持つ患者は、月に何回受診しても医療費が定額になる「包括払い」を選択できるようにした。「主治医」を決めることで、生活指導などにも取り組んでもらうためだ。

今回の改定について医療ジャーナリストは「医療も介護と同様に『施設から家庭』という考えだが、家族の負担は大きくなる。狙いは理解できるが、一歩間違えば、主婦層にしわ寄せがいく。女性の社会進出を妨げることにもなりかねない。在宅医療の推進のためには、家族の負担軽減をどう図るかという視点が必要だが、そこが欠落している。医療だけでなく介護と一体になった対策が必要だ」と話している。