◆みずほ銀行の甘い危機管理

みずほ銀行がグループ内の信販会社の「提携ローン」で、暴力団組員らに融資をしていたことが明らかになり、金融庁から業務改善命令を受けた。みずほ銀行は事実調査を行う第三者委員会の設置や、頭取らの報酬カットなどを検討しているが、対応の悪さが指摘されており、みずほ銀行の危機管理の甘さが露呈した格好だ。

みずほ銀行は「調査中」として、問題になった融資の実態を明らかにしていないが、関係者の話などを総合すると、みずほ銀行はグループ内の信販会社「オリエントコーポレーション」を通じ、「提携ローン」で暴力団組員ら反社会的勢力に対し融資をした。融資は230件、総額2億円以上と見られている。

反社会的勢力への融資自体が問題だが、深刻なのはみずほ銀行の対応のまずさだ。融資の実態を把握したのは2010年10月なのに、契約解除などの措置をとらず2年以上放置していた。さらに、事実は担当役員までにしか報告されず、経営トップ(頭取)は知らされていなかった。しかも、9月27日に業務改善命令を受けながら、記者会見を開かず、1週間後にようやく開いた会見では「調査中」を連発。当時の担当者からの事情聴取もしていなかったことが判明した。

こうしたみずほ銀行の対応について、企業の危機管理に詳しいコンサルタントは「大企業とは思えないお粗末さだ。不祥事が発生したら、企業は①事態の把握②影響の拡大阻止③再発防止策の策定――に取り組むのが常識だ。2年以上放置などというのは正常な企業のやることではない。組織を挙げて事実を隠そうとしたと言われてもやむを得ないだろう」という。

みずほ銀行は、前身のひとつ旧第一勧業銀行が1997年の総会屋事件で、トップが隠蔽を主導したとされ、厳しい批判を浴びた。大規模なシステム障害では、初動を誤り、被害を大きくした、と批判された。こうした苦い経験がまったく生かされていないことになる。

長期間放置していたことについて他行の関係者は「信販会社が間に入っているので取りはぐれがないと考えたのだろうか。反社会的勢力との関係遮断は企業倫理の第一歩なのに」という。また説明責任を果たしていないことについては「きちんと説明をしなくては、利用者離れを起こすことは明らかだ。信じられない対応のまずさだ」と話している。

経済ジャーナリストは「みずほ銀行が払うつけは想像以上に大きくなる。頭取の報酬カットでは納まらず、進退問題に発展するだろう」という。危機管理のまずさは企業の命取りになりかねないのだ。