◆始まった介護保険の見直し

厚生労働省は社会保障審議会の介護保険部会に、介護保険の見直し案を示した。これは介護の必要度が低い「要支援者」向けのサービスを、現行の介護保険制度から切り離し、市町村の事業に移す案だ。介護保険部会では、見直しの方向性には異論は出なかったが、細部については問題点も指摘された。厚労省は2015年度から3年間で完全移行することを目指しており、年内には介護保険改正法案をまとめ、来年の通常国会に提出する予定だ。

この見直しは、社会保障制度改革国民会議の提言に盛り込まれたもの。「要支援者」へのサービスにかかる費用は2000年度には3兆6000億円だったが、2011年度には8兆2000億円にまで膨らんでいる。高齢化がさらに進み、「要支援者」が大幅に増加すると、介護保険財政が破たんする可能性があることからの措置といえる。現在約150万人の「要支援者」に対するサービスは、各市町村が地域の実情に合わせ独自に定め、NPO法人やボランティアを活用することによって、経費を削減するのが厚労省の狙いだ。

しかしこの見直し案には、国民会議の提言段階から懸念が出されていた。主なものは「市町村によってサービス内容に差が出る」というものだった。介護保険部会でも「市町村の力量に差がある」「人材確保が難しい」「世帯構成が変化し、地域社会も変わっており、一律の移行は乱暴だ」などの疑問が続出したという。

これに対し、厚労省は現在の制度に盛り込まれている地域支援事業を活用し、現行の国と地方による6000億円は確保することを明言した。

このほかにも、見直し案には問題もある。「要支援者」の多くは、自宅近くの特別擁護老人ホーム(特養)で入浴などのデイサービスを利用している。見直し後も「要支援者」がこれまで通りにデイサービスが利用できるか不透明だ。特養の関係者は「軽度の人を、結果的に家に閉じ込めることにならないか。施設の運営にも影響が出そうだ」という。

ジャーナリストは「財政面から、医療も『在宅』が推進されており、介護もその方向にあるといえる。『施設から自宅で』という考え方だ。しかし、一方で高齢少子社会対策として『女性が働く社会』が必要になっている。このバランスをどう取るのか。政治の役割は大きい」と指摘する。

介護保険をめぐっては、一定の所得のある人の利用料の値上げも予定されている。いずれも、高齢者には厳しい見直しになる。介護保険財政の厳しさを考えれば、やむを得ない側面があるが、利用者へのていねいな説明が求められているといえそうだ。

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