◆動き出した防衛政策の転換

防衛省は防衛政策の指針になる「防衛計画の大綱(防衛大綱)」見直しのための中間報告をまとめ、公表した。中間報告には、核武装を進める北朝鮮を意識し「敵基地攻撃能力」の保有を検討することや、沖縄・尖閣諸島など離島防衛の強化のため、自衛隊の「海兵隊機能の整備」などが盛り込まれた。安倍晋三首相の持論である集団的自衛権の行使容認については中間報告には盛り込まれていない。再開予定の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(首相の私的懇談会)での討議などを踏まえ、年末の防衛大綱決定時に反映させる方針だ。

中間報告にはこのほか、警戒監視態勢強化のための高高度滞空型無人機の導入▽サイバー攻撃対応の強化▽首都直下型地震など大規模災害対応の強化――などが明記された。

注目されるのは「総合的な対応能力」という表現にとどまったものの「敵基地攻撃能力」保有の検討を書き込んだことだ。北朝鮮が日本に向けてミサイル攻撃を仕掛けた場合、現在の対応は、地上と海上から弾道ミサイルを撃ち落とすのが原則だ。しかし、これでは100%迎撃できる保証はなく、自民党などからは「事前に敵のミサイル発射基地を攻撃する必要がある」という意見が根強い。

これまで政府は、敵基地攻撃については「自衛のための攻撃ならば憲法上認められる」としながらも、「防衛(盾)は日本、攻撃(矛)は米国」との立場を取り続けてきた。これは外国の基地への攻撃能力を保持すると、周辺諸国の反発を招くなど、「総合的に判断すると、マイナスになる」(自民党国会議員秘書)という判断からだった。

中間報告で示された方向は、日本も「矛」を持つという、従来の防衛政策を大きく転換するものになるが、実現にはハードルも高い。防衛ジャーナリストは、予想されるハードルとして、①周辺諸国の反発②膨大な経費負担③日本の過度な防衛力増強に対する米国の懸念――を指摘する。そのうえで「『攻撃能力を持てば、相手をけん制し、抑止力になる』という考えがあるが、これは軍拡の思想。歯止めが利かなくなる。そもそも敵のミサイル発射の動きが、攻撃着手なのか単なる挑発なのかの見極めは非常に難しく、現実的ではない」という。

「敵基地攻撃能力保有検討」は、安倍首相の考えを反映していると見られる。集団自衛権の行使容認と並び、防衛路線を大きく変えるだけに、年末に向けた防衛大綱の見直しは、海外諸国の関心を集めることは必至だ。

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