◆増える「心の病」の労災認定

職場での対人関係や過労などによるストレスで、うつ病などの精神疾患になり、2012年度に労災と認定された人が、475人と過去最多になった。厚生労働省が発表した「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」で明らかになった。労災と認定された人は前年度より150人増え、3年連続で過去最多を塗り替えている。労働ジャーナリストは「低賃金でサービス残業を強いる『ブラック企業』が年々増えている印象だ。若年労働者にしわ寄せがきており、これでは健全な経済成長は望めない」と指摘している。

調査によると、2012年度に労災申請をした人は1257人。前年度比で15人減少したものの、4年連続で1000人の大台を超えており「高止まり傾向が続いている」(ジャーナリスト)。

労災が認定された475人のうち、自殺者(未遂を含む)は93人で前年比27人増。これも過去最多で、深刻な状況にあることを浮き彫りにしている。

原因別に見ると、「仕事内容や量の変化」(59人)が最も多く、次いで「嫌がらせ・いじめ・暴行」(55人)▽「悲惨な事故などを体験・目撃」(51件)――の順だった。前年と比べると、「嫌がらせ・いじめ・暴行」は15人増、「上司とのトラブル」が19人増の35人、「セクハラを受けた」が18人増の24人。職場での対人トラブルが急増、深刻化している。

認定された人を年齢別にみる30代が149人で最も多く、40代が146人、20代が103人。自殺者は40代(31人)、30代(23人)20代(20人)の順。働き盛りの世代に集中している印象だ。

また、業種別では「製造業」が93人と最多。次いで「卸売業・小売業」の66人。職種別では、「一般事務」(65人)、システムエンジニアなど「情報処理・通信」(30人)、「商品販売」(29人)の順だった。

厚労省は、2011年12月から、労災認定の新基準を適用し、業務による心理的負荷については具体例などを明記している。このため同省は「認定基準が分かりやすくなったことも、認定された人が増えて一因」とみている。

この結果に、ジャーナリストは「職場の荒廃が顕著になっている」と指摘。そのうえで「週刊誌などでは、特定の企業を『ブラック企業』と名指しすることも珍しくない。昔なら企業にとっては不名誉なことで、抗議をしたり、裁判になっただろう。長時間労働など劣悪な労働環境が当たり前のものとなり、『自分の職場は大丈夫。自分とは関係ない』という若年労働者も増えている。職場も2極分化しており、格差が助長されている」と話している。まだまだ就業現場の課題は山積みだ。