◆株式会社の保育所参入が本格化へ

厚生労働省は待機児童の解消のため、自治体に対し、株式会社が認可保育所への参入を積極的に認めるよう自治体に要請した。株式会社は現行制度の中でも、認可保育所の運営はできるが、なかなか進んでいない。大都市を中心に待機児童問題は深刻化しており、安倍信三首相が成長戦略の一環として女性の労働力活用を掲げ、今後5年間で待機児童ゼロにする「待機児童解消加速化プラン」を打ち出したこともあり、前倒しで株式会社参入を促すことになった。

制度上は認められている株式会社の参入だが、実質的には自治体が認可権限を持っている。自治体側には「会社が倒産したら保育園の園児をどうするのか」「保育の質は維持できるのか」といった懸念が強く、さらには既存の保育園の抵抗などもあって、なかなか広まらない。昨年4月時点の統計では、株式会社が運営する認可保育所は全国で376カ所。全体の2%に過ぎない。

その一方で、待機児童は解消されず、全国の待機児童は2万4825人(2012年4月)その中で、横浜市はかつて多くの待機児童を抱えていたが、積極的に認可保育所への参入策を推進した結果、全体の4分の1程度が株式会社の運営になり、待機児童問題は解決したといわれるまでになった。

今回の措置は一見「一歩前進」のように見えるが、この問題に詳しいジャーナリストによると「13年前の規制緩和策を実行しただけ」と手厳しい。株式会社の参入は2000年の政策。「この間、自治体の『壁』をなくすような政策を取ってこなかっただけだ。『倒産したら』という懸念があるならば、保証金の積み立てなど打つ手はあったはず」というのだ。

待機児童ゼロの方針についても、このジャーナリストは「2001年、2008年にも打ち出されたが、実現していない。今回も計画倒れにならないという保証はない」という。

今回の自治体への要請は、安倍首相が「待機児童解消」を打ち出したためで、厚労省が積極的だったわけではない。2015年4月の子ども・子育て関連3法の施行に合わせて、自治体が株式会社であることを理由に認可を拒めなくなるため、厚労省はそれに合わせて「株式会社の全面参入」をアピールする方針だったという。厚労省は要請に合わせ、保育士確保のためにリタイアしていた保育士(潜在保育士)の再就職支援や、保育士の処遇改善策、小規模保育事業の先行実施などの政策をパッケージにして発表した。いずれも実現すれば子育て環境は充実するが、「絵に描いたもち」にならないかは未知数だ。強力な政策実行能力が求められている。

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