◆メタンハイドレード産出

愛知県沖の東部南海トラフ海域の地層からメタンガスを分離して取り出すことに成功しました。経済産業省が発表したもので、海洋でのガス産出は世界で初めてのケースだ。日本近海には相当量のメタンハイドレードがあると見られており、エネルギー事情を一変する可能性もある。経産省は2018年年度の商業化を目指しているが、産出コストなどハードルも高い。

メタンハイドレードは、天然ガスの主成分でもあるメタンと水が、高圧・低温状態で結びついた「水和物」で氷状。火をつけると燃えるため「燃える氷」と呼ばれている。石油や石炭に比べ燃焼時の二酸化炭素の排出が少ないなど利点がある。凍土層や水深500㍍より深い海底に埋蔵されており、静岡県から和歌山県沖には日本の液化天然ガス(LNG)の輸入量の10年分以上に相当する埋蔵が確認されているほか、日本近海全体では国内のLNG消費量に換算すると約100年分に当たるという推計もある。

今回産出したのは、経産省の委託を受けた石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)。愛知県・渥美半島から約80㌔、三重県・志摩半島から20キロの海域で、地球深部探査船「ちきゅう」から海底に向けパイプを伸ばし、すでに掘削した試験井戸と接続。周辺の海水をくみ上げることで地層にかかる圧力を減少させ、ハイドレードをメタンガスと水に分離し、ガス回収した。

今後2週間程度をかけて数千~数万㎥のメタンガスを回収し、安定して産出できるかどうかや、周辺海底への影響などを調査していく。

メタンハイドレードは「次世代エネルギー」と呼ばれ、エネルギー事情の悪い日本にとっては朗報だ。茂木敏充経産相は「課題を乗り越えて、わが国周辺の資源が活用できるようになる日が早く来ることを願っている」と期待感を隠さなかった。

しかし、商業化にはハードルが高い。最大の障害は生産コストだ。メタンハイドレードは井戸1本から採取できるガスは通常の天然ガス田に比べると、10分の1~100分の1とみられている。今回の試験採取にかかったコストは100万BTU(英国熱量単位)当たり約50㌦という。シェールガスの米国での市場価格(約3㌦)や天然ガスの輸入価格(約15㌦)にはとても太刀打ちできない。さらにメタンガスは二酸化炭素に比べ、温室効果は25倍といわれ、ガス採取では漏れ出さないような工夫も必要だ。

ジャーナリストは「高いハードルを日本の技術力で克服することが求められている。夢のエネルギーに終わらせてはならない」と指摘している。