◆動き出した120年ぶりの民法改正

法制審議会(法相の諮問機関)の民法部会(鎌田薫・早稲田大総長)は民法改正の中間試案をまとめた。試案には、これまで規定がなかった「約款」について新たに定義やルール定めたほか、中止企業対象の融資で個人保証を原則禁止することなどが盛り込まれた。民法は1896(明治29)年に制定され、家族関係の規定が1947年に見直された以外、改正らしい改正はされておらず、実現すれば約120年ぶりの大改正になる。

民法は人の財産や身分などについて規定した法律で、国の形を造る基本法の一つ。対象が広いため、条文は1000を超える。明治時代の法律であるため、現代にはなじまない項目もあり、見直しの必要性は以前から根強かったが、特別法の制定や裁判所の判断で対処することが可能だったこともあり、先送りされており、民主党政権だった2009年に千葉景子法相(当時)が諮問していた。

今回発表された中間試案で注目されるのは、「約款」に関する新たな規定だ。約款は、事業者が相手(消費者)と契約をする際に示す画一的な条項。保険、携帯電話、銀行との取引、交通機関との運輸約款など幅広い生活の分野で活用されている。事業者にとっては大量の契約を効率的に結べるメリットがあるが、利用者にとっては個別交渉の余地がなく、約款自体が複雑で膨大なケースもあり、トラブルが生じやすかった。試案ではこの約款を「多数の相手方との契約の締結を予定し、あらかじめ準備される契約条項の総体」と定義したうえで、消費者が常識的に予測できない内容は「不意打ち条項」、過大な不利益を受ける場合は「不当条項」として無効にすることを盛り込んだ。

また、中小企業対象の融資で、個人保証を無効にするのは、連帯保証人になった人が多額の債務を背負い、破産や自殺に追い込まれるケースが多発しているためで、融資を受ける企業の経営者以外の個人保証を禁じることにした。

この試案いついては、早くもさまざまな意見が出ている。約款については、企業側から「契約書の見直しなど膨大な事務作業が必要になる」など消極的な声も聞かれる。個人補償の禁止についても、歓迎する声がある一方で「融資が受けにくくなる可能性もある」と慎重な声もあがっている。現に法制審の審議でも意見が分かれた箇所が少なくないという。

法務省は約1年かけてパブリックコメント(意見公募)をし、民法改正要綱を作成。2015年の通常国会に提出する予定だが、「総論賛成、各論反対」で難航する可能性も残されている。