菅直人首相の施政方針演説に対する公明党山口代表の代表質問

 参院は28日、本会議を開き、菅直人首相の施政方針演説などに対する各党代表質問を行った。 

 公明党の山口那津男代表は、重要課題を先送りする菅首相の政権運営に対し、「この国の首相をもはや任せられないという国民の声が高まりつつある」と糾弾。2011年度予算案について、2年続けて国債発行が税収を上回る異常な編成だと批判したほか、政府の新成長戦略は力不足として、成長の「新しい芽」を伸ばす政策に力を注ぐよう求めた。

■政権運営
 山口代表は、菅首相の施政方針演説を「欺まんと変節に満ちた期待外れのもの」と酷評。社会保障と税の一体改革に関する与野党協議に野党が応じなければ「歴史に対する反逆行為」と菅首相が発言したことに対し、「制度を整えて実施していく責任がある首相が野党を挑発するとは何事か」と批判した。さらに「あなたにはこの国の首相をもはや任せられないという市民、国民の率直な声が高まりつつある」と断じた。

■経済・財政
 山口代表は、11年度予算案で「新成長戦略が実現できるとは到底思えない」と力説。医療・介護、農業、環境の「新しい芽」を伸ばす必要性を訴える一方、中小企業の資金繰り対策と関係予算増額を要請した。

 また、公明党が10年度子ども手当法を修正、明記させた11年度以降の子育て支援施策の拡充が不十分だと指摘。子ども手当自体も単年度の時限措置で「その場しのぎ」と批判した。

 山口代表は、菅首相が27日に日本国債の格下げをめぐり「そういうことに疎い」と発言したことに対し、「危機感に乏しく、それを乗り越える決意も浅い」と糾弾。菅首相は「情報が入っていなかったということを申し上げた」と弁明に終始した。

■社会保障・雇用

 山口代表は、社会保障と税制の改革に関する与野党協議について「与党の具体案が出されなければ協議にならない」とし、年金の具体的な制度設計を含む社会保障の全体像を示すことを強く求めた。菅首相は「6月までに制度改革案と消費税を含む税制抜本改革案を示したい」と答えた。

 さらに山口代表は公明党が昨年12月に発表した「新しい福祉社会ビジョン」の中間取りまとめに触れ、「『支え合う』社会の仕組みづくりが重要」と主張。首相は「提言を踏まえ、議論のたたき台を提示したい」とした。また山口代表は、就職活動中の学生と中小企業を結ぶ「ドリーム・マッチ プロジェクトを継続すべき」と迫り、首相は来年度も継続する方針を示した。

■公務員制度改革

 山口代表は、民主党が掲げる「国家公務員の総人件費2割削減」について、公務員にも労働基本権を付与する関連法案に言及し、実現への道筋をただした。

 菅首相は「各種手当の水準や定員の見直し、労使交渉を通じた給与改定などを組み合わせて、13年度までにめどをつけたい」と述べた。

■離島振興、ワクチン
 山口代表は離島の住民に対し、「国土や海洋資源を守っている」と敬意を表明。その上で、本土の通所介護サービスを利用する高齢者らが多くいることを指摘し、「構造的弱者の生活を守ることは政治の重要な役割だ」と訴えた。

 一方、山口代表はワクチンで防げる病気から、国民の生命と健康を守るべきだとして、ワクチン行政の充実を主張。「国が主導してワクチン政策に関する総合的な戦略を策定せよ」と迫ったのに対し、菅首相は「予防接種施策の充実・強化を図っていく」と述べた。

■政治改革
 小沢一郎・民主党元代表の「政治とカネ」をめぐる問題で山口代表は、小沢氏の国会招致が実現していない現状を指摘し、「疑惑をもたれている議員が所属する党代表として、『小沢氏に説明責任を果たさせる』と明言すべき」と主張した。

 さらに、同問題の再発防止策について、首相の考え方が示されていないとし、「首相として民主党代表として、リーダーシップを発揮すべき」と迫った。

 菅首相は、小沢氏の国会招致について、「党代表として、これまでも必要な時に判断してきた」と強弁した。

■外交・安全保障

 山口代表は、「朝鮮王朝儀軌」などの図書を韓国に引き渡す「日韓図書協定」の国会承認について、「日韓両国の信頼関係を深めるソフトパワーの活用として極めて有意義」と強調し、全会一致による承認に向けた、首相の認識をただした。

 菅首相は、今国会での全会一致での早期承認に「努力は惜しまない」と述べた。